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君の瞳に映るもの

第3章 戸惑い

 いないのだ。

 桐生零一と名乗った男が、何処にも。

 気怠い躯を起こして、部屋の電気をつける。

 眩しさに目を細めて視界に飛び込んだ景色は、きちんと整えられていて、あの朝の淫らな行為の断片も呼び起こさない。

 タオルケットがかけられていただけで、服は着ていないけれど、ベッドはシーツが真新しいものに替えられ、脱ぎ捨てられた服も脱衣所のかごに入れられ、リビングは綺麗になっている。

 頭が混乱する。

 寝起きの出来事は、なんだったというのだろう。

「……夢?」

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