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君の瞳に映るもの

第3章 戸惑い

 どこか優しさを含んだ声が、私を安心させたような、怒らせたような、自分でも理解できない感情が渦巻いて、喉元から先、言葉になってくれない。

「雅緋」

 呼ばれて、はっとする。

 それでもまだ、私は振り返ることができなくて、言葉にならない感情と一緒に空気の塊を呑み込んだ。

「そのままじゃ、風邪引くだろ」

 小さな溜め息と共に、少し呆れた声が頭上でして、背後でガサガサと音が聞こえたと思ったら、肩に温かなものを感じた。

 着ていた上着がかけられ、筋肉質の腕が躯の前に回る。

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