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君の瞳に映るもの

第3章 戸惑い

「風邪引くぞ。後ろ向いてるから、まずは着替えろ」

 ぽんぽんと頭を撫でて、零一は窓の外を向いて、そこから見える景色を眺めて私が着替えるのを待った。

 触れただけの唇の感触を思い出して、口を開きかけるけれど、喉から言葉が出てくることはなかった。

 言ったところでうまく交わされそうだし、それが当たり前だと言われた時、私には反論して負かすだけの言葉を持ち合わせていなかったから。

 気怠さを思い出した躯で立ち上がるのは面倒だったけれど、着替えなければ話は進まないとクロゼットを開けてのろのろと着替える。

 全身が痛いような気がするのは、気のせいでも何でもなくて、屈むと腰に鈍い痛みが走った。

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