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君の瞳に映るもの

第3章 戸惑い

 抱き締め合う。

 鼓動が重なり合い、溶ける。

 私の心の奥で燻っていた複雑な気持ちも溶かされていくようだった。

 私から何か言えば、この心地よさが壊れてしまうと思うと、何も言えなくて、ただ、抱き締め合う。

 零一は、私の存在を確かめるように強く抱き締め、髪を撫でて頬を寄せる。

 会って数時間。

 正確には、再会して、だろうか。

 私の中の記憶は、相変わらず零一を思い出せずにいるけれど、触れ合っている時間が長いせいか、もうずっと前からこの温もりを知っていたような不思議な気持ちになってくる。

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