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冴えかえりつつ 恋

第1章 序章

丸山家は地元の資産家だ。

古い街並みも残る歴史の街であり、いまでは政令指定都市N市の郊外にあるため、そのベッドタウンにもなっているこの町の一番の旧家でもある。

屋敷は高い塀と鬱蒼とした木々に囲まれ、生活の気配は外からはわからない。

スモークガラスの高級車が出入りするのをみかけるが、人が出入りするのを見ることは稀だ。

そんな丸山家には4人の子どもがいる。
長男次男は県下随一の名門私立 藤蔭学園の6年制を卒業し、それぞれ一流国立大学へ進学し医師をしている。
長女もまた県下一の中高一貫のお嬢様学校に在学中。

だ・の・に
末っ子 丸山遥暉は地元の公立中学へ通っていた。
私立受験に失敗したわけでなく、本人の強い希望だった……とか。

公立中学校が悪いと言うのではなく、『あの丸山が⁈』と誰もが疑問を覚えるほど、異例の事だった。

その三男遥暉がこの春から兄たちの出身校藤蔭学園高等部への編入が決まった。

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