冴えかえりつつ 恋
第1章 序章
遥暉が、ようやく顔をあげた。
縋るような、仔犬のような瞳。
額をテーブルにぶつけそうな勢いで、
「 よろしくお願いします。」
と、頭を下げた。
大人たちにも安堵の表情がひろがった。
「 ありがとう、ありがとう。よろしく頼むよ。」
丸山氏と頭を下げ帰ろうとする遥暉を、
「 ハルちゃん、ゆっくりしていったら?
久しぶりだし。ね、倫典。」
先程の遥暉の緊張をみて、上出夫人は息子倫典を促した。
上出が頷いて、遥暉を自分の部屋へ招いた。
遥暉は上出と過ごした頃を思い出していた。