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冴えかえりつつ 恋

第5章 春休み

遥暉が高校生活や友達について話を聞きたいといったのは、興味本意ではなく本当に、藤蔭学園での生活に不安があって知りたかったのかもしれないと思った。

公立と私立では色々な面で違いがあると聞く。

学校が始まったら、できる範囲で学園内の相談には乗ってやろうと泰弘は考えた。

しかし遥暉と親しくなりたいと思う一方、奥手な泰弘は連絡先の交換を言い出せずにいた。

「僕はそろそろ帰ることにするよ。ごちそうさま、上出君」

立ち上がりかけた泰弘をまたも遥暉が呼びとめた。

「あの、岡田さんのメールアドレス教えてもらえませんか?」

「え?ああ、そうだね。学校のことでわからないことや困ったことがあったらいつでも連絡していいよ」

遥暉と泰弘は連絡先のデータを交換した。


泰弘は長男ゆえの生真面目さか、座の空気に敏感なほうだった。

しかし、昨日の葉書が足下に落ちてきた偶然や、ここで遥暉に再会出来た幸運に浮かれて、上出の硬い表情に気がつかなかった。


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