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冴えかえりつつ 恋

第5章 春休み

なつかしむような上出の声に、

「上出先輩より?」

「上出君より?」

遥暉と泰弘の声が重なった。

「もちろん俺のほうが上だった」

あっさり答えた上出に、泰弘も思い出したように話した。

「慶矩が小学生の頃に、『どうしても勝てない奴がいる』って・・・、上出君のことだったのかな」

「俺も慶矩がいなかったら、もっとぼんやり過ごしていたと思うな」

上出の言葉に、遥暉が羨ましがった。

「ライバル関係ですね。いいなぁ。僕もそういう存在がほしい」

遥暉の言葉に、上出が意外そうに聞き返した。

「へぇ、遥暉は人と競うのが嫌いだと思ってたけど?」

「そうかなぁ、自分ではちょっとわからない・・・」

「上出君から見たら違うのかも?」

泰弘が聞いた。

「中学の頃の遥暉は、目標に向かってものすごくストイックで、--ライバルは昨日の自分-- みたいな。
他人には優しいのに自分には厳しすぎ。 
-- 丸山は、ドMだ --って俺等は言ってました」

「ひっどい事ばっかり言ってますね」

「褒め言葉だって」

「はいはい、お褒めにあずかり光栄です」

中学時代を一緒に過ごしたらしい2人の気の置けない関係が伝わってくる会話。

昨日の絡み合うような空気は信頼関係のそれだったのか。微妙な違和感を覚えた。

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