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冴えかえりつつ 恋

第6章 市営プール

卒業以来初めて二人で市営プールに来た。


「大丈夫か、遥暉?」

50mプールを何往復か軽く流し泳いで先にゴールした遥暉はプールの壁に寄り掛かって肩で息をしている。

「しんどい。水が、とても重い・・・」

ゴーグルを外すと、色白の綺麗な顔があらわになった。

以前から見慣れたはずの遥暉の顔にドキリとした。

「あ、足は痛くないか?」

「それは大丈夫です」

「俺がお前の後ろを泳ぐよ。溺れても助けてやるから、大丈夫だぞ」

「不吉なこと言わないでください。
カナヅチじぁないんですから。
僕は適当に流してますから、先輩は存分泳いできてください。
どうせ休憩時間まであと5分もないですから」

「じゃ、ちょっと行ってくるな。無理するなよ」

「了解です」

遥暉は笑って敬礼のマネをした。

もう一往復流し泳いだ後水から上がり、上出の泳ぎを見ながら思いに耽る。


---相変わらず力強い泳ぎ。

水が上出に慄いて道を作って先へと押し進めているように見える。

--ポセイドン--

女子水泳部員にそう呼ばれていた。

無駄の一切ないきれいな逆三角形の水泳体型で、決して筋肉マッチョな体格だったわけではない。

海の覇王をイメージさせるほどの圧倒的な強さへの畏敬とキャプテンへの信頼をもって、そう表現したのだろう。


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