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冴えかえりつつ 恋

第6章 市営プール

上出を追いかけ入部した水泳部は、5月末頃から10月中の水温がある程度高い日には学校の屋外25mプールでひたすら泳がされた。

元来スポーツが好きではない遥暉にとって、この部活は甘くはなかった。

シーズンオフ中はひたすらランニング・筋トレ・ストレッチ。

隔週土曜日の午前はこの市営温水プールを借りることができたが他校と合同練習になった。


泳ぎに自信があったわけではない。


だからとにかく泳ぎこんだ。


筋肉の付きにくい遥暉は1日でもサボると、翌日身体が硬くなったように感じ、ストレッチや筋トレも欠かさず毎日やった。


苦しいけれど上出の「頑張ってるな。」の一言が、なにより嬉しくて励みになっていた。


泳ぎ疲れて帰って、ピアノ練習と学校の宿題や予復習に加え家の用事もあった。


疲れて落ち込む時は、廊下に出て窓から裏のマンションを見上げた。

上出の部屋の明かりがついているのが見えると、身体の奥底から何か活力が湧いて、天井知らずでいくらでも頑張れた。


それを先輩たちからは『ドM』と評されていたとしても、否定しない。



今でもそれは変わらない。

―――まるでストーカーだな。


と、遥暉はひとり苦笑した。



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