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冴えかえりつつ 恋

第7章 電車通学

遥暉はなるべく上出に気遣いさせないよう、ホームでは階段の手すりに沿って歩くよう気を付けた。



しかし地下鉄の車内は満員でどこかに掴まることすら難しい。


少し先の空いている吊皮を、長身の上出がつかんで遥暉に持たせる。


揺れに合わせてだんだん吊皮の真下へ移動できてしまった。



―――あれ? いつの間にか、いいポジション。これって偶然?



上出もうまいこと遥暉の後ろについて移動している。


遥暉の持っている吊皮の輪の部分でなく紐の部分をつかんでいる。


遥暉は背中に上出の体温を感じ、安心感から思わず顔がほころんだ。

上出は揺られるたび無防備に体重を預けてくる遥暉を真上から見下ろしたあと前を向くと、ニコニコしている遥暉の顔が窓ガラスに映っている。


―――満員電車でニコニコしている奴って珍しい。




まあ、不安で凹んでいられるよりはいいか。 

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