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冴えかえりつつ 恋

第8章 トラウマ

週が明けて遥暉の高校生活が本格的に始まった。


上出は今日も遥暉の左後ろに立ち地下鉄のホームへ続く階段をゆっくり人の波に身を委ねるように進んでいた。


いつの間にか遥暉に並んだ藤蔭学園の学生が話しかけていた。


「おはよう、遥暉」

「おはよう、コンちゃん」


遥暉とあいさつを交わしたあと、‘コンちゃん’と呼ばれた学生が上出に挨拶した。


「おはようございます、上出先輩」

「?おはよう」



とりあえず挨拶を返したが、誰だといわんがばかりの視線。


「あ、同じ小学校だったんですけど、覚えてないですか。近藤彬史です」


普段は天真爛漫な近藤も上出の仏頂面に押され気味で可愛そうになり遥暉が補足した。


「このあいだ話した同じ小学校出身のクラスメイト」



遥暉の説明で思い出した。


「ああ、遥暉ン家の庭で五葉松に上って枝が折れたって、すっげー怒られたあん時の?!」


「はい・・・・、」


「思い出した。なんでだったか俺が代わりに怒られてやったように記憶しているが・・・・」



上出の威圧感に、近藤がみるみる恐縮していく。


「はい、その節は大変ご迷惑をおかけしました」


「ま、今更だな。気にするな」


「さすが上出先輩」



思わず近藤が拝んだ。


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