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冴えかえりつつ 恋

第8章 トラウマ

しばらくすると誰かが近藤に話しかけてきた。

上出は横目でチラッと相手を確認した。



岡田慶矩、藤蔭学園2年生。

上出の小学校の同級生で、遥暉の趣味友岡田泰弘の弟。


「コン」

「あ、ヨッシー」



慶矩は偶然を装って近藤の右側について声をかけた。


「友達?紹介して?」


近藤を挟んで向こう側にいる遥暉を示唆する。


「うん?同級生の丸山遥暉。遥暉ぃ、こっちは岡田慶矩、俺の幼馴染で2年生」


「おはようございます」


遥暉は混雑で動きがとりづらいのか、ちょこっと首をすくめるような会釈をした。


--カワイイぃ!


「おはよ、よろしく俺はオカダ・・・」



さりげなく自己紹介のついでに握手をしようと手を出した慶矩の手首を、遥暉の向こう側にいた上出につかまれた。


「おまえ岡田慶矩だよな。俺、覚えてないか?小学校ン時一緒だった、上出倫典だよ」



―――視界に入れないようにしていたのに、わざわざ出しゃばってくんじゃねぇ。

と心で悪態をつきつつも、遥暉の前でそんな下品な言葉使いはしない慶矩。


「かっ、上出か。気が付かなったな」

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