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冴えかえりつつ 恋

第8章 トラウマ

―――これはやっぱり2度も同じ女の子に振られたトラウマだ。



上出は岡田慶矩のせいで好きな人にこっぴどく振られたことがあった。


それは幼稚園の頃の話、

園で一番カワイイゆり組のお姫様‘ゆみちゃん’のおままごとに付き合っていて「俺のお嫁さんにしてあげる。」と言ったら、

急に泣き出して


「カミデくんはカマキリみたいだからイヤっ。ユミの王子様はヨシくんだけだもん。」

と言って走って行ってしまった。



逆恨みだとわかっている。


小学校に上がって、勉強もスポーツも慶矩に負けないよう頑張った



当然、小学校では慶矩なんかより人気者になった。



「上出君カッコイイ。岡田君カワイイ」



それが周囲の評価だった。



由美ちゃんから告白されたが、「ちょっと違ったみたい、ゴメンね。やっぱり慶矩くんが好き」と再度振られてしまった。





それ以来、どこかに女の子に対しての不信感があり、踏み込み切れない自分がいる。



友人には、「上出は選り取り見取りだろう」とかいわれる。

実際何人かに告白されて付き合ったことがあった。

中学の頃は部活を優先していた。

今は、受験学区を越境して1時間半以上かけて登校していおり、市内の女子と交際すると、当然帰宅時間から逆算して一緒にいられる時間はごく少ない。

相手にはそれが不満だったのだろう。

かといって、休日にわざわざ勉強時間を割いてまで会いたいと思える相手もいなかった。


そんな薄情だから、決まって向こうから一方的にフラれてお終いになった。


つまり、---女子から”告られる”が”振られる”はセット---という法則が小学生の頃から全く変わらないという、悲惨な恋愛スキルが身についてしまっている。

しかし、なぜか恨まれたことも、あとが絶えることもないのが救いだ。

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