テキストサイズ

冴えかえりつつ 恋

第9章 岡田家の団欒


慶矩は今朝も遥暉たちと合流して一緒に登校した。


ふと思い出し口元が緩むのを禁じ得なかった。


「ヨシ兄気持ち悪うぅ」


夕食のテーブルで正面に座った妹が、慶矩の思い出し笑いを見て大げさに眉を寄せた。


もうすぐ50歳になろうというのに、三十代にしか見えない母親が慶矩の顔を見やった。


「何かいいことでもあったの?最近はやけにご機嫌がいいわね」

「別に、何も・・・・」


背筋を伸ばして箸を持ち直した慶矩に兄の泰弘が話しかけた。


「そういえば、先週、朝の地下鉄で向かいのコンちゃんと一緒だったよな」

「あ?うん」


短く返事をして、ブロッコリーをつまみ上げようとしたとき、

「上出君も一緒だったよな」

「?!」


グサッ!!

思い出したくもない上出の仏頂面を思い出し、ブロッコリを箸で突き刺した。

「お行儀悪い、お兄ちゃん」


妹は目ざとく指摘してきたが、無視して兄にこたえる。


「なんで知ってんだ?上出と知り合い?」


「あ、うん。この間、県立美術館で知り合ったばかりなんだけどね」


「ふ~ん、県美・・・・?」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ