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冴えかえりつつ 恋

第9章 岡田家の団欒

夕食の後、アルバムを持って部屋に戻った泰弘。

写真に写っているのは、小麦色に日焼けした遥暉。

それを見ていると、演奏者側だとは思えない体動かすのが好きそうな元気な少年。

美術談義で盛り上がるような文化系少年には見えない。



先日出会った遥暉は、綺麗な立ち姿で優雅に歩み、色白で繊細で柔らかく微笑んでいた。

非の打ち所がない姿を思い出していると、部屋のドアがノックされた。



ドアが開き慶矩が顔をのぞかせた。

「あ、やっぱり兄貴が持ち出してたのか、それ」

アルバムを指さして言った。

「ああ、みる?」

慶矩が部屋に入ってきて写真を見る。

「わかるわけないよ、今と印象が全然違うじゃん」

「そうかな、この気品だけはそのままだと思うけど」

「これ、きっと水泳部の現役だった頃だよな。よく日に焼けてる。今と全くイメージ違うね」

慶矩がフフッと喉で笑った。

「元気一杯って感じだな。
上出が登下校の付き添いをしているってことなのかな」

「上出君は無愛想だけど丸山君を大事にしているよね。スマートで優しい」


泰弘がつぶやくと、

「どこがっ?!」

と慶矩が毒づいた。



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