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君の背中

第1章 中総体

七回の裏
東中学校の攻撃

ツーアウト ランナーなし
点差は0-9



『これもう終わったね』
『東中野球部弱すぎ』



応援生徒からはそんな声が漏れる
その声をかき消すように私は叫んだ


「かっとばせー!けいと!」




そして大きく振りかぶって
ピッチャーからは鋭い球が投げられる


シュッ



松本のバットは空を切る



『ストラーイク!』





あと二つ…
あと二つで試合終了…


私は声援に更に力を込めた



そして2球目
再びピッチャーが大きく振りかぶる
その表情には余裕すら感じられる


松本…打て…!




願いが通じたのか


松本のバットに打球が掠れた



『ファウル!』




ツーストライク追い込まれた…
でも、今ので打球の感覚は掴めたはず
松本、打って。松本なら打てる…



3球目

投げられた球をしっかりと見て
松本がバットを振った

…!



次の瞬間





カキーン




そう小気味の良い音を響かせ
打球が大きくマウンドへ放たれた
そのまま打球はセンターライト間に落ちた



「ツーベースだ‼︎」




そして2塁に立った松本は
高らかにガッツポーズをした





その瞬間私は
話したこともない松本に
恋に落ちた

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