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恋してキスして抱きしめて

第13章 夏の嵐

「…………」



……足が……動かねぇ。


耳に纏わりついていた、蝉の鳴き声も車のクラクションも


一瞬にして聞こえなくなってしまった。


無音の世界の中、固まった体の中で唯一、機能している俺の目に


突如、映し出されたのは……



「…………っ」



俺が立ち竦む小道から、10メートル程先。


ログハウス調の小さなカフェの、テラス席。


視線に気付いたのか、麦わら帽子が少し上に上がって


その人が、落としていた視線を俺の方に向けた。



「…………!!」



………夢だ。


幻想に違いない。


水中にいるような、僅かに雑音が遠くから聞こえてくる気がした……その時


アイスココアのグラスから手を離して、彼女が口を開いた。




「……ユーリ……」

「…………っ」



その瞬間


全ての感覚が戻ってきて


体が吹き飛ばされるような、強い衝撃が全身を打ち付けてきて


……現実なんだと……意識が戻る。

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