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恋してキスして抱きしめて

第13章 夏の嵐

「……夢じゃ、ないよね……?」

「…………!」



テラス席から立ち上がった、彼女の声は震えている。


聴覚は戻ったけど、俺の体はまだ動けないままで


ただ、4年ぶりに見るその姿から、目が離せない。



「……どうして、ここに……」



……それは、俺のセリフだ。


偶然を装って逢えるんじゃねーかと


未練がましく何度も通った当時は、一度もその姿を見せなかったのに


何で、今になって………



「……ユーリ……
私のこと……忘れちゃった……?」

「…………っ」



一言も発しない俺を見て、彼女は泣きそうな表情でゆっくりと近付いてくる。


壊れたように鼓動を繰り返す心臓


沸騰したように流れる血の感覚



……忘れてない。


忘れられるわけないだろ。


俺は……別れてからもずっとお前のことを……




「……朱莉(あかり)……」


「………! うん……!」




名前を呼んだことで、あの頃死ぬほど好きだった笑顔になったから


駆け足になった朱莉に向けて、俺は無意識のうちに手を伸ばした。



……だけど



「…………!!」

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