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恋してキスして抱きしめて

第13章 夏の嵐

「……ユーリ……逢いたかった……っ」



朱莉がかぶっている麦わら帽子が、コツンと背中にあたる。


その感触で、朱莉がすぐ後ろに近付いてきたと分かり


振り返ればすぐ抱きしめられる距離だけど


俺はカバンを持つ手に力を入れた。



「あの頃と、全然変わらないね……」

「……変わったよ、俺は」

「変わらないよ、優しい目をしてる」



……やめろ。

これ以上、俺の中に入ってくるな。



「……ユーリ……!」



早足で歩き出した俺の腕を、朱莉が後ろから掴んだ。



「あの頃、楽しかったね……っ」

「………!」

「私、ユーリと一緒に過ごした大学時代が1番幸せだった。
……戻れるなら、もう一度……」



やめろ、やめてくれ。




「……離せ」




………自分でも、驚くほど冷たくて低い声。




「やめてよ、“ 奥さん ” 」


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