テキストサイズ

恋してキスして抱きしめて

第15章 あたしだけを、見て

「……陽菜ちゃん、ありがとう」


『………!』


「お礼を言うのは、俺の方だ。

心の優しい君が、千夏と友達になってくれて本当に良かった」


『………っ』


「千夏の笑顔が続くように、俺も頑張るから。

これからも、彼女のことを宜しくね」



陽菜にそう告げて腕時計を見ると、ちょうど11時半になった所だった。


このまま大学の駅まで電車で行って、帰りはタクればいいか。



「電話、千夏に変われる?
2人を立って待たせるの悪いから、どこか……」

『ユーリさん』



逆側のホームへと歩き始めると、陽菜に呼ばれる。



『……話の最後に、千夏が私に言ったことがあって……』

「ん?」



さっきの軽快さが消えた、小さくなった声。


携帯を再び耳に押し付けると……




『 “ あたしだけを、見て欲しい ” 』


「…………!」


『 “ いつか……ユーリさんがあたしだけを見てくれる日が、来てくれますように ”

……そう言った時だけは

千夏の声、震えていたんです……』

ストーリーメニュー

TOPTOPへ