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恋してキスして抱きしめて

第8章 だから、俺も予想外なんだって

「もう、なんなのよ今夜は。
いいかげんにしてよね」



会社から程近い、ビルの高層階にあるダイニングバー。


俺の隣りに並んで座るこの女……名前なんだっけ。


確か俺の2つ年上の彼女は、ワイングラスをカウンターの上に置いて溜息を漏らす。



「1ヶ月近く逢うのを待たされたのよ?
やっと連絡取れたから、嬉しくて昨日エステにまで行ったのに」

「どうりで綺麗だと思ったよ」

「嘘つき。
さっきから私のこと全然見てくれない」

「美しすぎて直視できねーんだよ」



浮くよね~


こんな見え見えのセリフ、歯がガタガタだぜ。


だけどスミレはパッと笑顔を輝かせて、俺の右手に指を絡ませた。


あ、そうだ、名前はスミレだ。


その業界では名の知れた、腕利きのメイクアップアーティストって自分で言ってたような。

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