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鍵のない手錠

第2章 日常


「瑛ちゃん!」

そう後ろから聞こえたと思ったら
背中に重みを感じる

「っ、重いっ、すよ・・・!!」
「お前まーた儚げな顔してたぞ。今日飲み行くか?パーっと!」
「颯介さんと?無理無理、嫌っすよ。俺酒よぇーし」

そういいながら
大学の校舎内を歩く

細身な身体と
この女みたいな顔立ち
そして瑛って名前

男くさい男らしい男の中の男!
みたいなんに憧れてたけど
それはもう絶望的だった

でも、・・・まぁ、この顔のおかげで
モデルとしてお金もらってるし
あんまり悪くも言えないが

「瑛ちゃんさー、彼女作りなよ。そのために飲み会してやってんだろ?」
「はー?よく言うよ、自分のためだろーが」
「しゃーねーだろ、合コンサークルなんだしよ。一期一会、いいじゃん。気に入ったやついてさ、フィーリング合ったら抱き合う。男と女それが自然だろ?お前は、潔癖すぎ」

そんな風に言われながら
頭をわしゃわしゃっと撫でられる


潔癖って・・・知らねー女と

キスなんか・・・できるわけねーだろ・・


「瑛ちゃん、女と遊びまくってるって世間騒がしてるけど本当は品行方正だもんな?童貞?」
「ばか!!!んなんけねーだろ!!」
「ジョーダン、だろ?ったく、すぐキレんなって。さては、瑛ちゃん排卵日?」
「はぁ!??女じゃねーってば!!」

そう叫ぶと、颯介さんに手で口を塞がれる

「瑛ちゃん、うるせぇ。飯おごってやっから機嫌直せ」
「一番高いラーメンな。俺を女扱いした罰だ」
「ラーメンでいいの?お肌に悪いんじゃない?」
「っ!!颯介!!!」

冗談を言われながら学食を目指す

この長身の男は雨宮颯介。
細身で、黒髪で堀の深い鋭い目が特徴。
ルックスは男前。

そしてどこか隆司に似てる・・・

二つ上の先輩なのに気安く喋れるのは
そのせいかもしれない
なんとなく心地良くて

「あ、弘大。」

そう言って、颯介さんが立ち止まる。
俺が顔をあげると
不機嫌そうな顔した男が立っていて
俺はまた女に振られたかと

その表情からすでに察していた



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