どう見ても猫。
第1章 ぼろぼろな黒猫。
その日は雨が降っていた。
連日続くニュースに寄れば、日本列島に台風が直撃しているらしい。
幸い俺の住む地域にはまだ到達していないが、ここ最近、ずっと雨が降っている。
そんな雨の中、俺は仕事終わりの帰路についている。
去年高校を卒業し憧れだったスタジオカメラマンという職に就いた俺は、仕事帰りでもさほど疲れは無く、週末で明日は休みだという事だけを考えたまま家へと向かう。
「え?」
やっと自分の住むアパートに着き部屋へ続く階段を上がったところで、俺はそんな間抜けた声を上げた。
自分の部屋のドアの前に、見覚えのない何か黒い塊がある所為で。
恐る恐る近付いてみれば徐々にはっきりしてくるその塊は、部屋のドアまであと5m程のところでやっとはっきりと正体が分かった。
背を丸くして座り込む黒猫だ。