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晴れと雨

第5章 落

渚を拾い、同居人として迎えたのも、端からこうなることを望んでいたのかもしれない。

あのあと、二人して感情が昂ってしまい、なかなか寝付くことが出来なかった。
ようやく渚が安心したようにソファに沈んだのは、外が明るくなってからだった。
一気に深い眠りに落ちた渚を、彼の寝室に運ぶことは、貴史にとって容易いことで。
見た目よりも重く感じる重さと、その重さがこの先も自分の手の中にあると思う貴史の口角は自然と上がっていた。
思っていた以上に重症かもしれない。
家族?恋人?いや、それ以上の何か。
心の拠り所。
貴史は、寝ている渚の頬に軽く触れる。

「わるいな…もう手離せないよ」

それが渚の望む形じゃなくても。
きっと力で捩じ伏せてしまうだろう。
大丈夫
ゆっくりなっていこう。焦ることはない。
貴史は自分の中の欲望と不安を押し込めて、渚の部屋をあとにした。

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