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晴れと雨

第5章 落

渚が目を開けたのは、昼を回ってからだった。
貴史は既に出勤しており、家の中は静まり返っていた。
なんだか現実味がない。
昨日の出来事は夢だったんじゃないか。そう思えてくる。
しかし、渚の目は腫れぼったくて、現実なんだと引き戻される。
昨日のことが事実だとしても、今日から何かが変わるわけではない。
変わるとすれば二人の関係の変化によって起こる、心境の変化か。
自分の心の中はどうなったんだろう。
言葉として貴史から安心をもらった。
これは大きい。おかげで渚の中の不安はほとんどない。
それから?
それから…
昨日怒らせてしまった菜々子に、このことを伝えておきたい気持ちがあった。
でも、どうやって?言葉にするのは少し難しい。
今はやめておいた方がいいかな。
とりあえず、

「お腹すいたな」

難しいことは貴史に相談しよう。そう切り替えると、渚は台所へ向かった。

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