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晴れと雨

第5章 落

「渚、何度も言うようだが、俺には恋愛する気はない。渚が思っている以上に、両親のことがトラウマなんだ」

「でも、だって」

「それにもうお前がいる。これ以上は望まない」

なるべく刺激しないように。
妙な誤解を解くには…。
距離を詰めている渚の頭を両手で包み、至近距離から見つめてやる。
これで自分から目が離せなくなる。

「いくら嫌がったって、もう離してやれない」

別の誤解を生みそうだったが、それでもよかった。
渚の本心が自分の思っていることと多少ずれていても、こう言ってしまえば渚は逃げられなくなる。
はじめはキョトンとしていた渚も、自分なりに言葉を理解した途端に顔を朱に染め上げた。

「…お前に恋愛するなとは言ってないからな。ただ今はゆっくりでいいんじゃないか?ある程度なら俺も慰めてやれるぞ?」

面白いほどに口をパクパクさせる渚に、意地悪な笑みを浮かべて。今日はもう疲れたから休ませてもらう。と言い残すと、貴史は自室へ消えていった。

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