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晴れと雨

第6章 堕

母さんと父さんには、弟しか見えていなった。
極端だろうか。
そんなことはない。
よくある夫婦の家庭内別居、まさにそのごとく、おれと両親の関係だった。
息苦しく、悲しく、悔しく、憎い。
負の感情の詰め合わせ。
早くここを出ないと、壊れてしまう気がした。
壊れてしまうのならまだいい。
壊してしまうかもしれない。
憎いと思っているはずが、それはしたくないと否定する。
家族を憎みきることは出来ない。
自分が消えるしかない。

頼られたい。
信頼されたい。
期待されたい。
誰かの居なくてはならない唯一無二の存在になりたい。
どうせなら、死ぬ前に掛けてみよう。
死ぬことは最期の手段。
その前に探せばいいのだから、おれの心の拠り所。
きっとそれは、暖かくて、眩しくて、今までに体験したことがないような。
都会に出よう。
その人に会うために。
自分がその人の拠り所になるために。

そしてあの人に救われる。
高貴で気高くて。凛々しい。
一目見て、この人の傍にいれたなら。そう感じた。
透き通るようなその空気の中では、肺の奥までいっぱいに息をすることが出来たのだから。



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