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秘密の恋。

第19章 最後の砦

「送別会、来てくれなかったのは、なんで?」
「みんなの前で、普通にしていられる自信が無くて…」
「…。」
木村は何も言わず、優しい眼差しで友香を見つめている
「木村さんが、向こうへ帰ってしまうと、寂しいです」
「また、いつでも会えるよ。そんなに遠くは無いから…」
「…遠いですよ…」
友香の目から涙がこぼれた。
頬を伝う涙を木村が優しく指で拭いてやる。

「寺嶋さん…いや、友香。友香と呼ばせてくれ」
「木村さん?」
「俺のことも“木村さん”じゃなくて、名前で呼んで欲しい…」
「えっ…?」

驚く友香。涙は止まらない。そんな涙を唇で拭うかのように友香の頬に優しくキスをした。

「木村…さん?」
「俺は、君が、好きだ」
木村は静かに告白した。
空いている店内。声が聞こえる距離に他の客や店員はいない。

「私、私も…木村さんが好きです」
ニッと笑う木村。
「コーヒー、飲んだら出ようか?」
「えぇっ、もう?」
さっき来たばかりなのに、やっと想いが通じたばかりなのに…戸惑う友香。その耳元に木村が囁く
「ここじゃ、出来ないからね…」
「出来ないって何…」
言いかけたがハッとして口を閉じる。友香の顔が赤い。

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