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人型ナビ

第4章 ドライブ②

コンビニで食べ物を買って、駐車場で食事を済ませると、エンジンをかけた。

香枝に、おまたせと言ってから、案内をお願いした。

他の車もナビと会話しながらスタートしようとしている。
俺だけじゃなく、他の人もきっと同じ気持ちになることがあるはずだ。
大丈夫、俺はおかしくない。
ナビに恋愛感情を抱くなんて、これだけ優れていればあって普通だ。
そのはずなんだ。
だから・・俺はおかしくないはずだ。

「どう、した、の?」
「あ、いや、何でもないんだ」
「次、は、500メートル先を左、だよ」
「わかったよー」


香枝の言うとおりに車を進めていくと、街中を外れてしまった。

「おいおい、こんな道知らないぞ?」
「新しい道、なんです」
「この道はどんなところを通る道なの?」

だんだんと薄暗くなってくる。
どうやら山間のようだ。
山の方は天気が崩れやすい。
だからきっと雲に太陽が隠れてしまったのだろう。

しかし、スタートから1時間くらい走ってきたが、ここまで天気が崩れてくると心配になる。

「山の、側面に、新しく、できた、道、です。山と、山の、間の、道、です」
「へぇ、こんな道ができたんだね」
「まだ、できた、ばかり、ですから、対向車は、少ない、で、しょう。この先、10メートル先を、左に、曲がります」
「でも、他のナビだって、この道を知っているだろうから。対向車に合わないとは、いいきれないだろ?」
「確かに、そのよう、ですが。これは、確率、の、問題、です。次の、信号、を、左、です」


香枝は、俺に話しかけるたびに俺の方を向く。
 決して、俺から顔をそらしたままで、話を進めることはなかった。
 左に折れ、右に折れ、何度も右左折を繰り返し、香枝が言っていた道に差し掛かった頃にはちょうど昼の時間だった。

原因は間違いなく俺だ。
途中で何度も道を間違えたからだ。

「2時間で着くところをこんなにかかっちゃったな・・ごめんな」
「いえ、気にしないで、ください」
「うん・・」

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