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天女

第3章 新たなる姫

「姫」

不意にかけられた声に振り返ると
華のように美しい異性がいた。

なんやかんやあったとはいえ気づかなかったのが不思議なくらいだ。

「はじめまして」
先ほどのこともあり私は警戒しながら挨拶をする。

「少し緊張しているようで」

そういうとその人は
片腕をつかい流麗な所作で傘を開いた。

「姫様」

「……はい?」

何かの演目の台詞だろうか。

番傘はゲームのキャラがつかうのはみたことがあるのだけれど……

けれどおかしい

そう考えるとやはりここは現代ではないのかもしれない。

「いかがでしたか?」

こちらの考えなど
気にもとめていないのだろう。
彼は優美に微笑んでいる。

「傘がないと濡れてしまいますよ」

「初対面を困らせるな 最も俺が言えたことではないがな」

西行の話をした早乙女早独眞は
新たに現れた男に向けて話しかけた。

「この至極……最上の芝居にみとれたのですか 兄上」

「その気色悪い口のききかたはどうにかならないのか
第一雨など降ってはいない」

その視線は番傘を睨む。

その表情には気づいているのだろう。
しかし独眞とは対照的にえみを崩さない。

「ふふ桜の花弁が降っておりますから
この花の舞うもとでさすのが良いのですよ」

「桜の妖精みたいです」

「はあ…… 浮いていると思わないのか その傘」

確かに舞う姿は花に劣らない。

だからといい
この役者のように突然現れた男の
話においていかれては困る。

「あの……どちらさまで? 」



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