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フーセンガム

第62章 traveler's check

(櫻井side)

ピーンポーン。
緊張した赴きで、チャイムを押す。

萌「櫻井さん。おひさしぶりですね」

冬斗のお姉さんの萌さん。

「おひさしぶりです。お母さんはいますか?」
萌「ごめんなさいね、今、出掛けてて。それで…冬斗ですね?」
「はい。そろそろ…場所を教えていただけませんか?」
萌「……電話します?」

曖昧過ぎる返事に、頷くしかなかった。

電話を耳にあてると、プルルっと響く。

冬『もしもし。』
「ふ…冬斗?」
冬『……誰?』
「翔…だよ」
冬『しょ、翔?』
「そうだよ」
冬『翔!久しぶり!』

明るい声が聞こえる。

「うっ…」
冬『翔?どうしたの?』
「ごめんっ、なんか感動して…」

冬斗とまたこうして話せるなんて…。
夢じゃないかって思う。

冬『変わんないねぇ。』

幼いころの冬斗の笑顔が浮かぶ。

「冬斗」
冬『なに?』
「お願いがある」
冬『俺の居場所でしょ?』
「えっ」

わかってんの?

冬『いいよ。教える』
「えっ、いいの?」
冬『だけど、ひとつ聞かせて』
「なに?」
冬『……智は、元気?』

消えかけそうな声で聞いてきた。

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