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衝動

第1章 〜キスと衝動〜





「ちゅっ…」

いつものように彼の唇に、自分の唇を重ねた。

「ちゅ…ちゅー…っ」

何度も。何度も。

彼の首に手を回し、吸い付くようにキスをする。

『んっ…ぅ』

いつも彼は、優しく受け止めてくれる。

私は、身長は156cmと、そこまで低いわけではないけれど、背伸びをしないと届かない。

多分、彼もそれを気遣って、私の腰に手を回して支え、ただただ受け止めてくれる。

「………」

彼の瞳を見つめる。

『ん……満足?』

その訊き方は卑怯だと私はいつも思う。

彼は満足しているようにも読み取れるし、誘っているようにも読み取れる。

「…………」

彼を見つめる。

『……まだしたいの?』

「………ちゅっ」

無言でキスをする。

私は言葉で相手に伝えるのが苦手だった。

だから、肯定の意味を含めて、キスをする。

『…………』

彼は私から離れた。

「…………」

私は、無言のまま見つめた。

『…口で言ってくれなきゃわからないよ?』

意地悪だ。

今日はしたくてたまらない日なのに。

「………全然……足りないです……」

『…………』

彼は私に、誘うような、挑発的な目を向けた。

衝動というものは多分、本能から来てるものなのだろう。

だから抑えるのは難しい。

だから、いつもこうやって、彼にその衝動をぶつける。

自分を抑えられない理由を、本能という言葉で言い訳して、私は彼にまたキスをした。

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