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秘密の時間は私のもの

第24章 2人の帰り道 1人の決意

なにかに気付いてハッとしたかと思えば、瞬時、真っ青になった。



「ど、うしよう...今更だけど、僕、振っちゃったんだ...上野のこと...」



そんな百面相を見て、颯太は上野に恋してるって一目瞭然なのに


なんで押す気になろうか。



元々俺は

“颯太が上野と付き合うまで協力する”

そういう名目で傍にいるんだ

だったら、何も変わりはしない

俺がすべきは



目に映る文章を消し、再度文字を打ち込んでいく。



『大丈夫。絶対大丈夫。俺がいるんだから大丈夫』



颯太をサポートする。


たったこれだけ。


震えるスマホの画面を見て、颯太は思い切り顔を上げた。


そして俺を真っ直ぐ見詰める。



「本当に、本当?」



こくん、と1度頷く。



「本当に、本当の本当?」



こくんこくんと2度頷く。


そんな俺の様子に颯太はぷるぷる震え


そしてばっと両手を広げたかと思うと、ぎゅーっと俺に抱き付いてきた。



「!?」



半パニックの俺を他所に颯太はより強く俺を抱き締める。



「ありがとう!ありがとう亞!大好き!」



颯太の口から1番欲しかった言葉。


出来れば違う意味合いを持っていて欲しかったけど


今はもう十分だ。


俺は震える手を颯太の背中に回した。


これで最後と心に決め、俺はぎゅっと颯太を抱き締め返したのだった。

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