秘密の時間は私のもの
第31章 デート①
“颯太とデート”
そんなもの、行くべきではない。
やっと、やっと俺の思う状況になったのに。
気持ちを捨てる環境が出来たのに。
その気持ちは、颯太を見ただけで安易に燻り、顔を出す。
だから、絶対に行くべきではない。
ない....そう。分かってるんだよ.....
なのに、現在俺。
悩みに悩んだ私服着て、指定の位置にて待機中。
手にしっかりチケット持って、本当、馬鹿じゃねぇの
片手で顔を覆い、はぁと息を吐く。
いや、ね。
聞いて下さいよ。
俺は、努力したんですよ。
こうならないために。
“来れなくなる”努力を。
チケットを渡され、内心喜んだ自分は“来ない”努力はできないと悟った。
だから、来れなくなるにはチケットを排除するしかないと考え
上野に返すことを選んだんだ。
それで、2人が行っちゃえば俺ってば恋のなんたら?
なんて自分の士気を高めながら。
っていうか、高めなければ、いろいろ折れそうだったんだが.....
しかし、このミッション、俺の想像以上に難しく。
俺は、全くもって上野の姿を捉えることが出来なかったのだ。