秘密の時間は私のもの
第33章 デート②
もうウザいようだけど、1ヶ月、俺と颯太は会わなかったわけで。
楽しもうとは決意したものの、久し振りの再会はもちろん気まずいもの。
会話の1つさえ、出てこない。
そんな空気が流れると思って、俺は念入りに話題を頭に入れてきた。
の、だが。
「今日、結構寒いねぇ。待った?」
「い、や。俺も、ついさっき来た所で.....」
「......ふふ。そっか。じゃあ行こうか」
会話の1つも2つも出てくるし、お陰で気まずさなんてまるっきり感じない。
1ヶ月、会わなかった時間があったとは思えないくらい颯太は自然だ。
笑顔も、話し方も何1つ、不自然なところはない。
そんな颯太を見てると、錯覚する。
“俺は、嫌われていない”、と。
いや、そもそも“嫌われてる”ってことすら確定していないことなんだが。
「亞はどう思う?」
「へ?!」
いきなりの意見の提出要請。
考え事をしていて、颯太の話を聞いておらず、言葉に詰まる俺。
話聞いてない、ってどう考えても、失礼だよな
でも、適当に答えるのもダメな気がするし
どうしようかまたも悩んでいると、むにぃと頬を摘まれる感触。
地味に、痛い。
「亞ー。人の話は聞かなきゃだよー?」
「ご、ごめん」
頬摘みは颯太なりの怒りの鉄髄だったようで。