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秘密の時間は私のもの

第33章 デート②

触れられている所から、それが伝わるのではと思い


振り払いたいのに、安心する温かさが俺を離してくれない。


深呼吸を終えた颯太がまた、ゆっくり目を開き、ゆっくり言葉を紡いだ。



「亞、僕はね.....僕は....」



「自分の意思で亞の気持ちを汲んだんだよ」



さっきとは違う意味合いで喉が鳴る。



「その結果、僕の中にあるもう1つの“好き”に気付くことになったんだ」



つまり、颯太は、俺のことが.....?



俺に都合の良すぎる展開。



だけど、待てよ



颯太は、一途でありたいと願って俺の気持ちを捨てようとした。


一途って言葉は、上野に向けられるもの。


それは、俺はどうしたって上野には勝てない、ということ。


つまり、今日、俺がここに呼ばれた理由は....



「お疲れ様でしたー」



掛けられる言葉に、一気に現実に引き戻される。


その声は観覧車が1周した合図。



「.......降りよっか」



そう言ってにこりと笑い、観覧車を降りる颯太。


確かに、色んな事が分かった今、俺は颯太を怒るべきなんだろう。


だけど、心は妙に落ち着いていて。



そうか、俺は、今から....



一呼吸ついてから、俺は観覧車から降りたのだった。

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