秘密の時間は私のもの
第33章 デート②
「僕は、最低なんだよ。亞のその気持ちだって大事なものなのに」
違う。こんなもの、大事にする必要ない。
お前を苦しめるこんなもの。
否定するのに、何故か胸は高鳴っていて。
「だから、亞は僕を怒っていいんだよ
俺の気持ちを捨てやがって。侮辱しやがって、って」
合ってる。合ってるんだよ。
その扱いで。
こんなものは、お前が気付くべきものじゃなかった。
颯太の行動を肯定するのに
“一途でいたいのに”
さっきの颯太の声が耳で木霊する。
「でも、亞はしないでしょ?
僕が優しいと思って、その優しさで、僕が亞の気持ちで苦しむと思ってる
長年連れ添った亞の気持ち、粗末にできるわけない、とか僕が思うと思って」
だって、そうなんだろ?
颯太は、優しいから、俺の、気持ちを
ドクンドクン...
止めろ。期待するな。
「でも、実際を見なよ。僕はその真逆をしようとした
亞の気持ちを捨てようとした」
「僕は“優しさで”亞の気持ちを汲んだんじゃない
そうだったらどれだけ綺麗な話だっただろう」
颯太はそっと目を伏せ、深く深呼吸。
その間にも俺の心臓は大きく音を鳴らしていて。