秘密の時間は私のもの
第37章 ハピエン厨ですから
目の前の現状。
どういうことなのかなんて、考えずとも分かる筈なのに
あまりに突然過ぎると、人間驚き過ぎて思考が止まるらしい。
「立川、やっぱりって.....」
「あ、伺った時にちょっと、その...えと....上野の匂いがふわっと....?」
「....んだよ。それ」
「....照れた?」
「ちげぇよ」
「でも、耳赤いよー?」
「っるせぇ」
「クスクス」
思考は止まっているのに、バカップル上等な会話はしっかり意味さえ捉えて頭に入ってくる。
颯太はそんなんで良いのか?とか
色々疑問、持つべきだろ、とか
思う事は多々あるのだろうが、俺の頭が1番先に思い付いたのは
“帰ろう”
ただ、それだけ。
有言実行(言ってねぇけど)とは正にこの事。
俺は、持っていた颯太の腕を離し、そこにいる面々に背を向け歩き出す。
「まだ無視をするつもりですか」
背中に掛けられた、その言葉に返答さえ返さず歩く足も止めない。
早く帰って、今日のこと全てを忘れて、寝たいのに滝波という女はそれをさせてくれないらしい。
俺の前に両手を広げ、立ち塞がり通せんぼ。
そんなんで止めたつもりかと、抜けようと試みるのだが
右に行けば、右へ。
左に行けば、左へ。