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黒の青空

第8章 6

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自分が思っていたよりも外は寒かった

きっといつもなら普通に歩けたはずだ

体がびっくりしたんやと思う

立っていられないほどだった

部屋にずっといただけで

こんなにも抵抗が弱くなるなんて…


「…ごめん…」


頭の上からぽつりと降ってきた言葉

この人は何を思ってうちを外に連れ出したんやろう

この前うちが外に行く洋に「ええなぁ」なんて言ったからだろうか

だとしたら申し訳ない

「ええよ」って言ってあげたいのに

声を出そうとするのもしんどくて

服をちょっと握る、たったそれだけの力さえ今の自分にはなかった

洋はぎゅーっと抱きしめてくれてた

うちが寒くないように布団と一緒に

頭は洋の胸にすっぽり収まった

あったかい

ドクドクと心音が伝わってくる

はっきりとドクドクが伝わってくる

心配せんで?

焦らんで?

うちこれ以上面倒起こさへんよ

風邪なんて引かへんから

ぎゅーってしてくれてるから風邪なんて引かんよ



そう頭の中で言ってたら

洋の腕にもう少し力が入った




額に柔らかい感触

洋の唇とわかった


「……洋助…」


やっと名前を呼べた

そしたら頭を撫でてくれた

珍しく冷たい手やった


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