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特別刑務所(仮)

第8章 狩野。

15年前から進められているプロジェクト。通称をCARPと言われるその政策はうまく行った。そのおかげで国が繁栄し続けているのは周知の事実。ただ、どこの家庭でもこの政策通りに子供を産めた訳じゃない。家はその一つだった。
父親は早くに亡くなり母親は俺と弟を育てるために働いた。
でも、国はそんな俺たちのような家に優しくなかった。学校へ通うためのお金も、病院へかかるためのお金も一切の免除はなく支援すらされない極貧な生活。
そんなときだった。母親は新しい男と出会いその男とどこかへ行ってしまった。生きるためにまだ小学生だった俺は食べ物を盗むことで弟と生きてきた。
今思えばそれが最初の犯罪だったのかもしれない。
毎日ばれないかと恐怖する日々。
正直悪いことをしている自覚はあるものの、なにもしてくれないこの国が悪い。子供心にそう思ってきた。
そんな生活が続いたある日母親が帰ってきて、あと一人必要だとか呟いて弟を連れていった。
わけもわからず一人そこに取り残されて怒りしか感情が芽生えなかった。
それから暫くしてのことだった。初めて万引きで捕まったのは。

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