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メビウス~無限∞回路

第4章 囚われる闇

 唸る闇の中で響き渡る笑い声。
 軋む廊下を歩きながら、恐怖にすくんだ足が進まない。足元を照らすのは、心細い蝋燭が一本あるだけだ。
 闇は何も景色だけを侵蝕している訳ではなく。―――迷い歩くこの心までも侵蝕していた。
 
「何処なんだっ!」
 
 声を大に叫んだつもりだが、しかし喉からはヒューという音だけが漏れている。
 
「かわいそうに闇に囚われたんだね…」
 
 蹲ったままの手元にある小さな灯りが揺れた。
 見たくないという気持ちと、相反した瞳が見開く。
 
 響いた笑い声と同じ声。
 瞳が写す影がつっと姿を現した。
 
「………ね…んど」
 
 五センチ位のねんど人形が首をくるくる動かし、少年の前に姿を現した。
 
「ここは?」
「キミ…は?」

 聞きたいことが沢山がある。すべてを聞きたいという焦りからか。
 少年はねんど人形を掴み上げた。

「カワイソウニ、堕チテ来タンダネ…」

 喉の部分を押さえてしまっているせいか、それともこれが本来の声質なのか。少年には分からない。

「何を言っているのか、わからないっ!」

 ねんど人形は空洞にさえ見える。深淵の瞳を少年に向けたまま、首をくるくると回す。
 笑い声が狭い廊下で響き渡った。

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