
妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
「お願い、早く来て! 一二三の力だけじゃ、結界が持たないの!」
ただでさえ手に負えない鬼だ。温和な妖魔である一二三には、荷が重過ぎる。一二三の訴えに答えた団右衛門は、しっかりと前を見つめていた。
「悪い、気付かなかった。すぐに嘉明を助けるぞ!」
八千代は刀を向けられると、歪めた顔を涙に染める。
「そう……団さんは、ぼくを哀れむ気持ちはないんですね。あなたがぼくを鬼にしたのに、あなたがぼくを殺したのに!」
八千代の声を使い同情を誘おうとするが、もう団右衛門は鬼の気配に気付いてしまったのだ。頭を大きく占めるのは、絶望ではなく嘉明の心配である。そして嘉明を想う心は、冷静さを団右衛門に取り戻させたのだ。
「八千代、あんたは哀れだよ。俺が追い込んだのも違いねぇ。俺だって、八千代が嘉明に可愛がられてると、大人気なく嫉妬するんだ。あんたは……もっと辛かっただろうな」
「そう思うなら、首を差し出せ! 儂を慰めるものは、その醜き顔が血に染まる光景だけだ!」
「うるせぇ!! たとえそうでもあんたは八千代じゃねぇ、鬼に動かされているだけの傀儡だろうが!」
