A heart and wound
第7章 疑櫂
翔Side
夜、仕事が終わったのは、日付が変わる少し前だった。
雅紀には、昼間のうちに夜に雅紀の部屋に行くことを伝えてあった。
待ってる。
そう、一言返信が来ていた。
俺は、急いで帰り支度を済ませ、マネージャーの車で、雅紀のマンションまで送ってもらった。
「翔くん!明日は、迎えはここに来たので大丈夫?」
翔「うん、よろしくね。」
おやすみ、と一言交わして、俺は雅紀の待つ部屋へと向かった。
…今朝、にのが出て行ったあと、どうやってスタジオまで行って、何を話したのか、全然覚えていない。
何が、そんなに引っかかったのか、何がそうさせるのか、俺には分からなかった。
今日、本当は雅紀のとこに来るべきじゃなかったのかもしれない。
だけど、心配してくれている雅紀のこと、無視したらいけないと思った。
ちゃんと、向き合って話さないと。
今は、頭の中ぐちゃぐちゃだけど。
それでも、話せることは、話さないと。
だから、こうやって、ここに来てるわけだけど…
雅紀、明日も仕事あるよね⁇
…さすがにもう少し気を使うべきだった。
こんな遅くまで起きて、待ってもらうなんて。
雅紀の部屋の合鍵はあるから、それを使ってマンションの中に入り、もうすっかり行き慣れた、雅紀の部屋の前に辿り着いた。
翔「…ふぅ…」
インターホンを鳴らすか迷い、合鍵を使って入ろうと、鍵穴に鍵を差し込もうとした瞬間、ガチャ、と扉が開いた。
そこには、笑顔の雅紀が立っていた。
雅「…やっぱり。おかえり、翔ちゃん。」
そう言うと、ぎゅっと俺を抱きしめた。
翔「…なんで、分かったの…⁇」
雅「そりゃ、翔ちゃんのことならなんでも分かるよ。
ほら、中入って?」
そう言うと、中に招き入れられた。