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A heart and wound

第7章 疑櫂


俺が、リビングのソファーに座ると、雅紀も隣に座った。

翔「…ごめん、こんな遅くなって。

明日も早いんでしょ?」


雅「なーに?

いつも、どんなに遅くなっても待ってたでしょ?

それに…俺、今日はちゃんと翔ちゃんの顔、見たかったから。」

そう言って、俺の前髪を掻き上げ、額にキスを落とし、にこっと穏やかに笑った。

翔「…あ、あのね…?

雅紀に、話があるんだ。
あの…俺、ほら…」

焦れったい言い方の自分自身に腹が立つ。

…だけど、言わなきゃ。

雅「ねぇ、翔ちゃん。

お腹空いてない?」

俺の話を遮り、雅紀がそう尋ねた。

雅「空いてるかなーって、ご飯作ったからさ、先食べよう?」

翔「うん…食べる…」

…ご飯を用意してくれてて、こんな遅くまで待っててくれて。

それなのに、そんな雅紀の好意を無視して話し続けることは、俺にはできなかった。

…また後で、タイミング見て話そう。

雅「…ちょっと待ってて、温め直してくるから!」

そう言うと、俺の頭をぽんぽんとして、キッチンに向かった。

…温かい。

こんな、こんな優しい彼氏、いないよ。

そりゃ…束縛されることもあるし、それを面倒くさいと思うこともあるけど。

…それでも、俺のことを見ててくれる。

なのに、俺は…今、自分のことばっかり。

俺、嫌な奴だ…

雅「しょーちゃん⁇

用意できたよ?こっちおいで?」

翔「うん、ありがと。」

俺は、そう返事をして立ち上がり、食事を用意してくれている、テーブルの方に移動した。

テーブルの上に用意されていたのは、2人分の食事。

翔「え⁈雅紀も食べてないの⁇」

雅「久しぶりでしょ?

だから、一緒に食べようと思って。
あ!俺が勝手に待ってただけだから!
気にしないで⁇」

そう言って、苦笑いをした雅紀を見て、ギュッ、と胸が締め付けられた。

翔「…ん、ありがと。
嬉しい。」

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