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A heart and wound

第4章 嫉妬

翔「う、ん…」

目を覚ますと、俺の上で抱きついたまま、すやすやと雅紀が眠っていた。

…あ、あのまま寝ちゃったのか、と理解するまでに少し時間がかかった。

さすがに、このままでは重かったし、雅紀の体にも負担がかかると思い、起こさないように注意しながら、雅紀を俺の横に下ろした。

…外はまだ真っ暗で、もう少し寝ることが出来るはずだが、覚醒してしまった俺は、寝るに寝付けず、隣の雅紀の寝顔を盗み見し、髪をそっと撫でた。

…雅紀は、俺のことをすごく愛してくれているし、大事にしてくれている。

それは、付き合う前からそうだった。

…松潤が好きなのに、にのとも関係を持っていた、中途半端で最低な俺を、好きだと言ってくれて、泣いてくれて。

松潤が好きだと言いながら、それでも雅紀を愛したいと、そんなわがままを言う俺を、ひまわりみたいな笑顔で、受けとめてくれた。

…付き合い始めた最初の頃、雅紀は、2人っきりで会っても、指一本触れてこなかった。

後になって聞いたら、拒絶されるのが怖かったんだよと、そう、雅紀は笑って言った。

…好きな人が、自分を好きじゃない苦しさを、辛さを…怖さを、知っていたはずなのに、忘れたふりして、雅紀を傷つけた俺に、いつまでも待つから、そう言って笑ってくれた。

そんな優しい雅紀だったから、気付けばどうしようもなく、雅紀を好きになっていた。

…初めてひとつになった夜、雅紀の手は少し震えていて、本当にいいの?と何度も聞いてきた。

俺が頷く代わりに、愛してると言うと、何度も、ありがとう、俺も愛してるよ、そう言って、優しく、俺を抱いてくれた。

…俺、知ってるよ。

あの日の夜、1人で泣いてたこと。

…何度、1人で泣いたんだろう、どれだけ涙を流させてしまったんだろうって、胸が苦しくなった。

あの時、心の中で、待たせてごめんね、そうつぶやいて、もう、この人を1人で泣かせないって思った。

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