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A heart and wound

第4章 嫉妬

智「はいっ、出来たよ〜‼︎」

そう言って、テーブルに朝食が並べられた。

智くんらしく、ザ・和食。

メニューは、白米に焼き魚、味噌汁、卵焼きで、どれも美味しそうだった。

翔「うわぁ、うまそう…」

智「じゃあ、食べよっか?」

翔「やった!いただきます!」

智「どうぞ?」

そう言ってクスッと笑った智くんに見守られるように、味噌汁を啜った。

翔「…んっま!めっちゃ美味いよ、智くん!」

智「よかったぁ。」

そして、智くんはいつものふにゃっとした笑顔を見せた。

それから、他愛のない話をしながら、朝食を食べた。

…だけど。

考え過ぎかな?とも思ったけど、やっぱりそうだ。

…智くんが、起きてから1度も俺の目を見ようとしない。

もしかして…昨日、酔った勢いで変なことしちゃった?

なんだろ…なんだかすごく…悲しいよ。

その時、部屋の扉をすごい勢いで叩く音がした。

そして、扉の向こうから、男の罵声が聞こえてきた。

翔「さ、智くん⁇…だ、誰、なの?」

智「…ごめん、翔ちゃん。ちょっと、待ってて?」

そう言って、少し迷惑そうな顔をしながら玄関へと向かった。

扉を開ける音がして、智くんは外にでたみたいだった。

何を話しているのかはよくわからなかったけど、相手の男が怒っていることだけは分かった。

しばらくして、再び扉の音がして、智くんがリビングへと戻ってきた。

翔「さ、智くん⁇…って、大丈夫⁈」

みると、頬が赤く腫れていた。

智「大丈夫、大丈夫。ごめん、気にしないで⁇…でも、顔は酷いよねぇ。」

そう言ってふにゃっと笑ったけど、明らかな作り笑い。

翔「…気にすんなって、無理だよ。誰なのあの人。どうしてこんなこと…」

智「大丈夫だから、ね?…後、誰にも言わないで。」

そう言って困ったように笑うから、もう何も言えなくて、

翔「…わかった。けど、何かあったら言ってね?」

…そういうのが、やっとだった。

そのあとも、何もなかったかのように智くんが振る舞うから、俺も、いつものように振る舞った。

それから、タクシーで俺のマンションに向かい、俺の車に乗り換えて、一緒にスタジオへと向かった。

…その移動の間も、智くんはずっと喋り続けていて、無理してるのが分かったけど、無力な俺はただただ、相槌を打つことしか出来なかった。

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