闇夜に輝く
第10章 初シャンパン
そして、楓さんが乾杯ビールを飲み終わったタイミングでさらにシャンパンのボトルオーダー。
ボトルとグラスと氷水の入ったシャンパンクーラーを用意し、海斗がシャンパンを開けに行く。
「それでは開けさせていただきます。土屋様、何かお祝いですか?」
「いゃね、咲ちゃんが初勤務でこの業界も初めてで、しかも初接客って聞いちゃったらさぁ。シャンパン入れたらずっと印象に残るかなと思ってよ。だけど楓が来る前に入れたらこいつ拗ねるから。またそーなると面倒なんだよこいつ」
「別に拗ねないけど。思いっきりツネるか、ビンタはするかもねぇ」
長年の付き合いを感じさせる土屋様と楓さんの会話。
土屋様が呆れた表情で咲さんに助けを求める。
「ほらー、咲ちゃん酷くない?俺客だよ?どう思う?」
「ふふ、めちゃ仲よさそうでうらやましいですね」
けれど咲さんはニコニコしながらそう答えてしまったので、土屋様は海斗に話を振る。
「ありゃ。ちょっとぉボーイさん、この店の教育はどうなってるの?」
「えーと、ビンタとか僕にとってはご褒美なんでなんとも言えないです」
海斗も咲さんと同じように満面の笑みでそう答えると、土屋様が吹き出した。
「あっはっは、ダメだぁこの店。まともなのが一人もいない。まぁそれを言ったら俺を含めてか」
この卓全員のノリの良い会話のキャッチボールに嬉しそうな顔の土屋様。
海斗はお茶目な雰囲気のまま、土屋様に話しかける。
「いえいえ、この話題の中心は土屋様ですから。後はそのご褒美を受け入れてもらえるかどうかですが」
「ふふっ、準備は出来てるわよ〜」
楓さんが小悪魔な笑顔で手首をクルクルと回す。
「あれ?いつの間にか俺がビンタを受け入れる流れになってない?」
土屋様のその言葉に卓の全員が大いに笑う。
海斗は笑顔のまま、
「それでは咲さんの初接客と土屋様の初ビンタを祝しまして開けさせていただきます」
『ポン!!』