齧りかけの林檎
第4章 ● 待つ君の ♂side
今すぐにでも彼女の元に走っていきたかった。
でも足の裏が、地面にくっついちゃったみたいに
張り付いているように感じて、
その場から一歩も動けなかった。
おれのために一生懸命走っている・・・・・。
き、来た・・・・・!
緊張で顔がひきつる。
でも彼女が汗だくになって必死に走ってきた姿を見て、自然と笑みがこぼれた。
「ほんっとにごめんなさい!!!あのッ!!!ざっ、残業があって!!!
みんなでやってたからエレベーターもすっごい混んでて乗れなくて!!!
階段を下りてきたんだけど、わたしの足じゃエレベーター待ってたほうが早かったかも!!!
ほんとにこんな時間まで待たせてごめんなさい!!!」
息を切らせながら、早口でそんなことを言ってきた。
なんだ、事故とかじゃなかったんだ。
ほんとに、よかった・・・。