20年 あなたと歩いた時間
第8章 24歳
ふーん、と納得したようにまた広輝は
電車のおもちゃで遊んでいる。
こんなに、何でもないことだったんだ。
私はすごく難しく考えていたのかも知れない。
流星と、私はちゃんと愛し合っていた。
むしろ、早く広輝に教えるべきだった。
めったに開けることのない引き出しから、
何枚もの写真を取り出した。
子どもの頃の流星、
小学校で陸上を始めた頃の流星、
四人で撮った中学校の入学式、
高校生になって恋人同士になった流星と私、
大学に入って白衣を着て
実習に行く前の流星。
あの頃、流星の疲れた顔しか
記憶にないと思っていたのに、
写真の中で、白衣を着た流星は
生き生きしているように見えた。
本当なら、今年から医師としての一歩を
踏み出したところなのだ。
そして、流星がこの世からいなくなる
二日前。成人の日の、四人。
「広輝、見てごらん。これがお父さん。小野塚流星」
「おのづかりゅうせい…」
「そう。ママはパパのことが大好き」
「ぼくよりも?」
「広輝がいちばんすきよ」
流星。ごめんね、遅くなって。
広輝に流星のことを打ち明けることが、
やっとできた。
いま、あなたがここにいてくれたら、
どんなに幸せかな。
きっと写真はどんどん増えて、
私達の未来は永遠に続いたんだろうね。
でも、この写真の中の私達にも
未来はあったよ。
一秒、一分、一日先の未来が。
電車のおもちゃで遊んでいる。
こんなに、何でもないことだったんだ。
私はすごく難しく考えていたのかも知れない。
流星と、私はちゃんと愛し合っていた。
むしろ、早く広輝に教えるべきだった。
めったに開けることのない引き出しから、
何枚もの写真を取り出した。
子どもの頃の流星、
小学校で陸上を始めた頃の流星、
四人で撮った中学校の入学式、
高校生になって恋人同士になった流星と私、
大学に入って白衣を着て
実習に行く前の流星。
あの頃、流星の疲れた顔しか
記憶にないと思っていたのに、
写真の中で、白衣を着た流星は
生き生きしているように見えた。
本当なら、今年から医師としての一歩を
踏み出したところなのだ。
そして、流星がこの世からいなくなる
二日前。成人の日の、四人。
「広輝、見てごらん。これがお父さん。小野塚流星」
「おのづかりゅうせい…」
「そう。ママはパパのことが大好き」
「ぼくよりも?」
「広輝がいちばんすきよ」
流星。ごめんね、遅くなって。
広輝に流星のことを打ち明けることが、
やっとできた。
いま、あなたがここにいてくれたら、
どんなに幸せかな。
きっと写真はどんどん増えて、
私達の未来は永遠に続いたんだろうね。
でも、この写真の中の私達にも
未来はあったよ。
一秒、一分、一日先の未来が。